亡霊の樹






  : 空はあかね色に染まりつつある。じき、夜の帳が降りるだろう。
  : 周囲よりひときわ背の高い樫の梢に夕日が差し、ちらちらと光が踊る。色づき始めた初秋の樫の葉が山荘の白壁に彩りを加えていた。
  : 森のなかに立つ山荘は、その言葉から想像していたものよりも大きな建物だった。全体的に意匠が古めかしい。
  : 山荘の片隅の屋根が沈んでいるのは、火災とその後の風雪のせいだろう。
  : あなたがこの山荘を訪れたのは、数日前に届いた友人からのメールがきっかけだった。
東雲 朔:『先週 心霊スポットの穴場情報っていうので見に行ったところがあったんだけど、そこはたいしたことなくてさ』
東雲 朔:『その帰り道に、カーナビに表示されてない脇道に入って、そこで山荘っぽいの見つけて』
東雲 朔:『用事あったしそのまま戻ってきちゃったんだけど、あとでそこのほうが有名な心霊スポットって知ってさ。よかったら行かない?』
  : メールにはニャルニャル動画という動画投稿サイトのアドレスが書き込まれており、どうやら、その山荘は知る人ぞ知る場所だったようだ。
  : その動画は、廃墟巡りを趣味としている学生が山荘を訪れた様子を撮影したものだった。
  : あなたも動画を見たが、幽霊といえば幽霊に見えなくもないぼんやりとした影が一瞬とはいえ確かに映っていた。
  : 「後から調べてわかったのですが、そこは20年前、多くの人が亡くなった場所だったのです」
  : 「季節は極寒の冬。山荘で火事がありました。彼らは火事から逃れようとして外に出たものの、吹雪のために進むことも戻ることもできず、凍死したそうなのです」
  : 「この事故で山荘の住人の娘さんも命を落としました。ぼくの見た影は、凍死した彼女の霊だったのかもしれません」
  : 動画につけられた投稿者コメントにはそう書かれていた。
  : 投稿者は事故の詳細や山荘の正確な場所について訊かれても、一切答えようとはしなかった。そのため、あるいはすべて作り話なのではないか──、という視聴者のコメントも多く寄せられていた。
  : けれど、山荘の存在はうそではなかったのだ。
東雲 朔:「こっちから入れそうだね。それとも他に入り口あるか見てみる?」
  : 友人があなたに向かって言う。指さしているのは、正面玄関から回り込んだところにある、ペンキがひび割れてささくれを作っている木製のドアだ。▽
八坂 貴:「んにゃ、僕はどこからでもオッケー!でも見て回りたい気持ちはある。なんてったって僕もこれでも研究者!なので」▽
東雲 朔:「あーそうだったっけ……。じゃ、俺は東のほう見てくるから西をよろしく」▽
八坂 貴:「忘れるなーーー!!???ばかばかばか!!」
八坂 貴:「あいあい、西ね……太陽のごとく沈んできますともさぁ……」▽
東雲 朔:「もう太陽沈んでるけどな」夜だし。と付け加え「またあとで」
  : では、あなたは一度友人とわかれ、西側へと向かう。
  : 山荘は二階建てだ。一階の西側にガラスの割れた窓があって、その周囲だけがかなり黒く汚れている。おそらくはあそこが火元なのだろう。
  : 火事がそれなりに激しいものだったことが外側からでもうかがえる。
  : さて、あなたはくるりと周囲を見回してみた。
  : ……いつの間にか、随分霧が濃くなっている。
  : 山荘を取り囲む森が霧の中に沈んでいた。
  : そして、遠くから、鳥の声とも金属音ともつかない甲高い音が聞こえてくる。
  : かさり。
  : 森の奥でなにかが動いた。▽
八坂 貴:「ファンタスティック!ビンゴでは?僕が先に見つけましたもんね~、僕が誰よりも一等賞ーーー!」
八坂 貴:「さあさあお顔を拝見!だ~~~~れだ!くるっ」▽
  : 霧の中に、かすかに影が見える。
  : 霊か……? だけれど、それにしては奇妙な姿をしていた。
  : その影は服を着ておらず、灰色の皮膚に覆われているようだ。目と口の位置には、粘土に指を押し当てたようなくぼみがあるだけで、
  : 長い髪はどこか作り物めいていて、ことに妙なのはそのぎこちない動きだった。
  : あなたはその影から目が離せない。 SANc 0/1▽

 八坂 貴:CCB<=65 SANチェック
 Cthulhu : (1D100<=65) → 29 → 成功


八坂 貴:「ありゃまぁ………思ってたのと違ったな……」▽
  : あなたがその影を見つめ続けていも、不意に視界から消え、その後現れることはなかった。
  : 同時に反対方向から友人があなたを呼ぶ声がする。
東雲 朔:「入れそうなところ見つけた。……なんかあった?」▽
八坂 貴:「おってがら~~~!グレートですね!」
八坂 貴:「こっちはねー、心霊スポットにいそうなのがいた!朔ぴの話もあながちうそじゃないんだなぁ~」▽
東雲 朔:「嘘つかないからね」うん。「噂は本当ってワケか。でも動画だと廃墟の中に出るんだったのにな……」→
東雲 朔:「また別のがいるのかな」▽
八坂 貴:「そだね。嘘つかないもんね」
八坂 貴:「え~~~~~っどこもかしこも魑魅魍魎のなんとやらじゃない………」
八坂 貴:「この森だと思っていたものも、実は廃墟の一部だったのではないか?そう、これは逆転の発想。…なんてね!入ろ入ろ」▽
東雲 朔:「おまえがそういうと妙に信憑性あってこわいなあ……」
  : 東側を見る、と言っていた彼は、どうやらあの幽霊のような姿を見ていないらしい。
  : ──森はまだ、霧に覆われている。
  : 先ほどの奇妙な影はなんだったのだろうか。頭の片隅にそれを置きつつ、あなたは廃墟の中へ足を踏み入れた。
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  :   亡霊の樹   presented by Kandai Matumoto
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  : 
  : 
  : あなたたちが足を踏み入れたのは物置部屋のように見える。
  : ダンボール箱の積まれた棚があり、棚の脇には工具箱や水まき用のホース、灯油のポリタンクやスコップといったものが置かれていた。
  : 奥には一枚扉が見える。▽
八坂 貴:「廃墟だと思ってたけど……想定していたよりなんでもかんでもごろごろあるねぇ」ダンボールの積まれた棚を見た!▽
東雲 朔:「そうだな。案外残ってるもんなんだなあ」きょろきょろ
  : タオルや着替え以外にガラスの破片……など。特に気になるものはなさそうだ。▽
八坂 貴:「ガラス片……なんなんだろなここ…」工具箱を開ける パカッ▽
  : うーん。壊れかけの工具がごちゃごちゃしているだけだ。▽
八坂 貴:「武器にはなんないか………ポリタンクに中身残ってっかな……いや残ってたらやだな」見た!▽
東雲 朔:「これだけいろいろしまい込まれてるってことは単純に物置部屋とかなんじゃないか」漁ってるのを見てる
  : では〈幸運〉どうぞ▽

 八坂 貴:CCB<=65 幸運
 Cthulhu : (1D100<=65) → 49 → 成功


八坂 貴:「まぁ物置いてあるから物置なんだけどもさぁ確かに」▽
  : 幸いポリタンクの中にはなにも残っていないようだ。武器……ややひび割れてはいるものの、バールのようなものが見つかるだろう。持っていくことができる。▽
八坂 貴:「ほ~~~~~~~ら見よ!!物事調べればいいことがあるってもんだってさぁ~~~!ほらほら!!」バールを見せた!ぶんぶん!▽
東雲 朔:「幽霊と戦う気?」元気だなあ。「なにがいるか分からないからご信用にはいいかもね」▽
東雲 朔: 護身用。ご信用は……ありそう。とても。▽
八坂 貴:「にゃっ、ほら幽霊さんもびっくりしたら消えるかもしんないじゃん。ねっ!これはつまるところ僕が今この場で誰よりも強いという証ってわけ」▽
東雲 朔:ちょっとむっとする。「存在を確かめにきたのに消えたら困るだろ。消えないと思うけど……奥に行く?」扉を見ながら▽
八坂 貴:「朔ぴ、ないものは消えないよ。無を生み出すのは有だけなんだ。要は「消える」ってことはその前段階としてそこに存在がないといけない」
八坂 貴:「ってことでまあいるってことでさ!奥いこ!」奥の扉の前に立ってみる▽
東雲 朔:シークレットダイス
東雲 朔:「…………うん。そうだね」うんうん。頷いた。
  : 扉に鍵はかかっていないようだが…… *〈聞き耳〉ロールが可能▽

 八坂 貴:CCB<=75 聞き耳
 Cthulhu : (1D100<=75) → 49 → 成功


  : あなたは扉に対して耳をそばだててみる。ホコリやカビの匂いはしているものの、物音などは特に聞こえてこないだろう。▽
八坂 貴:「人はいなさそう、お邪魔しまーす」開けた▽
  : 扉を開けると、狭苦しい通路が見えた。
  : 半ば扉が開いた戸棚があり、中には薄汚いスラックスやセーターなどが丸めて詰め込んである。
  : おそらくはどれも男性用で、点々とシミがついているのはカビだろうか?
  : 通路の先は洗面所で、汚れた鏡に友人の持つ懐中電灯の明かりが映っている。携帯を取り出して、彼がこう言った。
東雲 朔:「もう一回山荘について確認してみる? なにか知りたいことあったら教えるよ」▽
八坂 貴:「え?…うーん……知りたいことなぁ……… 今までどのくらい人が訪れてるのかとかかなぁ……」▽
東雲 朔:「んー、このあたりの山荘はここくらいしかないから、それこそ20年前は結構来てたんじゃないか?」→
東雲 朔:「少なくとも閑古鳥が鳴いてたって風ではなさそうだな。こうやって廃墟になってからはほとんどだけど」▽
八坂 貴:「20年前ね……なんでここ廃墟になったんだろな」▽
東雲 朔:「そういえば、謎の事件とかそういうのを集めたブログに、この山荘のことが載ってたな」
  : 彼は携帯を操作しながら、ブログを開いてみせる。それは週刊誌の記事の抜粋だった。
  : ブログには、山荘で火事に遭って吹雪の中を自力で下山した客らの証言が掲載されていた。
  :『この証言が注目されたのは、客の一人が「山荘の主人の頭がおかしくなって、あの日、殺人事件が起きた」と看護婦に言ったためだった』
  :『だけれど、あとになって客は「そんなことは言っていない。言ったとしても意識がもうろうとしての言葉だから、信じないでほしい」と前言を翻した』
  :『ほかの客も彼の言葉を否定したとのことだ。いずれにしても真相はわからずじまいである』
東雲 朔:「……っていう理由? 火災事故ってよりは殺人事件が原因っちゃそれっぽいけど、まあ曖昧だね」▽
八坂 貴:「なるほどな~~~~…」
八坂 貴:「鏡とかTHE心霊スポットっぽくない?あえて狙って行かない?」洗面台の方行きます▽
  : そうだねえ、と眠そうな声を後ろに、あなたは鏡に目を移すだろう。
  : ひどく汚れ、ひび割れている。同じく割れたプラスチックのコップなどがあるが、めぼしいものはなさそうだ。▽
八坂 貴:「幽霊はいないかぁ……こういうとここそ出そうなんだけどなぁ」▽
東雲 朔:「動画では階段の踊り場って言ってたし、もしかしてそこから動けないのかも」▽
八坂 貴:「踊り場ね……とりあえず行けそうなとこから見てみたいけども」▽
東雲 朔:「うん。じゃあ先行こ」
  : そのまま暗闇を進んでいけば、つきあたりに扉があるのが見える。
  : 扉を開けると、そこはどうやら山荘のラウンジのようだ。閉め切られた部屋特有のよどんだ臭いが鼻につき、思わず顔を顰めるだろう。
  : 一角が食事用のスペースになっており、大きなテーブルが2つ、並べられている。北側の壁際には暖炉。暖炉のまわりには肘掛け椅子が置かれていた。
  : 部屋の北側と西側に扉がある。
  : *ラウンジ全体に〈目星〉が可能▽

 八坂 貴:CCB<=75 目星
 Cthulhu : (1D100<=75) → 89 → 失敗


  : 見渡しても、特に気になるものはないようだ。
  : 食器や肘掛け椅子を見てもなにかが置いてあるわけでもない。
東雲 朔:眉を顰めながら「けっこう広いんだな……西か東、どっち先に行く?」▽
八坂 貴:「これ普通に迷子になりそうだなぁ……クラピカ理論で……西!」
八坂 貴:「踊り場以前に階段が見当たらないもんね~~」▽
東雲 朔:「何理論?」ピンときていない
東雲 朔:「階段なあ。見てけば見つかるだろう。西ね」
  : 西側の扉を開け、奥へ進むと、いまだ生々しい火事のあとが目に飛び込んできた。
  : 黒く炭化した柱と、すすけて真っ黒になった壁。スチール製の柱は健在だが、これも真っ黒になっている。
  : 足元には燃え落ちた何かの破片。うっかりするとつまずいて怪我をするだろう。
  : もとがなんだったのかわからないその表面は、黒ずみ、泡が弾けたようになっている。
東雲 朔:「上が、」懐中電灯を向ける▽
八坂 貴:「こりゃあひどいなぁ…… 何?何?」見る▽
  : 友人にうながされて見上げると、2階部分の床が崩れているのがわかった。
  : よく屋敷全体に火が回らなかったものだ。天井に近い部分にはガラスの割れた壁があって、そこから夜空が見えていた。
東雲 朔:「やっぱり結構ひどい火事だったんだな」▽
八坂 貴:「空って大事だなぁ心が洗われるかのようだ」
八坂 貴:「ねーーー。いつ崩れてもおかしくないなぁ……戻る?」▽
東雲 朔:「そうだな。星きれいだな」「東に行くか」▽
八坂 貴:「うむ」▽
  : では東……もとい、北側の扉へ向かう。東にはなにもなかった。瓦礫しかなかった。
  : ラウンジの北側扉の奥は、四畳半ほどの事務室だ。
  : スチールの小さな机のうえには、当時でも年代ものであっただろう黒電話。金属製の手提げがついた木の箱があったので、開けてみると、ばんそうこうや市販薬が入っていた。
  : どうやら山荘の客のための救急箱のようだ。
  : 隅に金属の補強がついている布張りのファイルを開くと、それは山荘の利用者の名前と住所、電話番号の記録簿。
  : 個人情報にやかましい昨今を思えば、隔世の感があるだろう。
  : また、あなたの目にキャビネットが留まる。
  : そこにあったのは薬だ。ざっと二十種類前後はあるだろうか?
  : 市販の頭痛薬や睡眠導入剤もあれば、薬局や医院の名前が印刷された紙袋に入った薬も。
  : 紙袋に書かれた患者名は、どれも同じ。おそらくはこの山荘の主人の名だろう。
東雲 朔:ひとつを手に取りながら「短期間にいろんな病院でもらいまくってるな」
東雲 朔:「持病の薬でもなさそうだね。見たところみんな精神科っぽいけど……」▽
八坂 貴:「セカンドオピニオンは優秀な判断だけど、流石に量が多いなぁこれ……不安でもあったかな」▽
東雲 朔:「さっき見せたブログの記事でも妙な発言が残ってたっぽいし……そうかもね」
東雲 朔:「もしくは……」口を噤み「いや、なんでもない。階段探そうか?」▽
八坂 貴:「ん。そっから先は僕が聞き捨てならないから言わないのが正解だ」
八坂 貴:「そだねぇ、早くユーレイさんにご対面~~~~~!ってしたいもんにゃ!」▽
  : 友人が頷く。あなたたちは階段を探すことになるだろう。 <判定:幸運>▽

 八坂 貴:CCB<=65 幸運
 Cthulhu : (1D100<=65) → 12 → スペシャル


  : では、あなたはぱっと階段を見つけることができる。素晴らしい。▽
八坂 貴:「にゃっ、ほらほら僕が優等生!階段!これ階段!ねっねっ」▽
東雲 朔:「うんえらい。タカシえらい」褒めた「行くか。足元気をつけて」▽
八坂 貴:「やさし~~~~!コングラッチュレーション!って言ってほしい」ついてく▽
東雲 朔:「こんぐらっちゅれーしょん~~」
  : 動画の投稿者は、階段の途中で霊らしきものを見ている。
  : あなたたちは一歩ずつ、踏みしめるようにして、階段を登っていく。
  : そのときだ。
  : 懐中電灯の先。
  : 鈍い光の中に、若い女の白い顔が浮かび上がったのは──! SANc 0/1▽

 八坂 貴:CCB<=65 SANチェック
 Cthulhu : (1D100<=65) → 25 → 成功

 東雲 朔:CCB<=60 SANc
 Cthulhu : (1D100<=60) → 5 → 決定的成功/スペシャル


  : 事前に言われていたこともあるのか、あなたの性格ゆえか……あまり驚くことはなかった。
  : けれどもちろん逃げてもいい。隣の友人は見たことのないくらい目を輝かせているように見えるけれど。▽
八坂 貴:「こんにちは!お会いできて光栄の至極に存じます、姫」あいさつをしました▽
東雲 朔:「ええ、本物? すごい、本当に会えるなんて……サイン、あ、無理か……」
  : ……けれど。
女性:「……え、えっと……すみません、なんのことですか……?」
  : 懐中電灯を手にした女性が言った。それは紛れもなく──『人間』だ。
  : 年齢は20代だろうか。あなたたちとそう変わらないように見えるが、訝しげな表情を浮かべている。▽
八坂 貴:「やあこれは本当にお美しい女性だった!!僕の言葉に嘘偽りはなかった!happy」▽
女性:「はあ……」
女性:「……あ、あの……すみません。わたし理由があってここに来て……あなたたちはこの山荘の関係者ですか?」▽
八坂 貴:「え、いえ無関係者です。通りすがりの年甲斐もなく好奇心旺盛に仲良く肝試しなんぞをやっている哀れな男二人の片割れの、八坂貴といいます」▽
東雲 朔:「もう片方の東雲です」なんかちょっと漫才の最初のアレみたい……「お騒がせしてすみません」
穂村 月子:「いえ……わたしは穂村月子というものです」
穂村 月子:「この山荘から歩いて30分くらいのところに老人ホームがあるんですが、ご存じですか」
  : 友人が「いいえ」と答える。もちろんあなたも知らない。
穂村 月子:「そこにわたしの祖父が入居しているんです」
穂村 月子:「祖父は軽度の認知症で、歩き回ってしまう癖もありましたから気をつけていたのですが、わたしがちょっと目を離した隙にいなくなってしまって」
穂村 月子:「いったんはもっと町の方に行ってみたんですが、行けども人影がなくて……」
穂村 月子:「祖父は以前にもここへ来たことがあったので、ホームのスタッフと一緒に念のため調べに来たんです」
穂村 月子:「祖父を見掛けませんでしたか? 祖父はホームから非常用の懐中電灯を持って出ているはずなんですが、その明かりを見ていませんか?」▽
八坂 貴:「それは大変だ……いえ、僕達はまだ明かりにもお祖父君にもお会いしてはいないのですが……お祖父君は以前もこちらに…?」▽
穂村 月子:「そうなんです。たしか……一週間くらい前でしたかね。そのときはすぐに見つかったんですが……」
東雲 朔:「もしよければ捜すのをお手伝いしましょうか。こんなところで一人でいるのは不安でしょうし……」ちら、と友人を見る▽
八坂 貴:「ええ、お手伝いしますよ。大切な人命が最優先ですから」▽
穂村 月子:「本当ですか? ありがとうございます……!」
  : では、あなたたちは月子に先導されながら二階へ登っていくこととなる。
東雲 朔:「老人ホームのスタッフというのは、今どちらへ?」
穂村 月子:「二階の部屋を回っている際中です。1階の方で物音がしたものですから、わたしが様子を見に」
  : だが、月子の言葉に反して2階に人がいる気配はない。
穂村 月子:「穂村です。木崎さん、いらっしゃいますか」
東雲 朔:「おじいさんのお名前は?」
穂村 月子:「芳山幸吉です。母方の祖父なので名字が違います」
  : 友人が声を張り上げて名前を呼ぶが、なにも反応はない。
  : そこであなたは扉が二枚あることに気がつく。ひとつは目の前にある扉。もうひとつは『管理人室』と札がかけられた扉だ。▽
八坂 貴:「……管理人室……鍵でも置いてあるととってもとってもありがたいんだけどなぁ」管理人室!▽
  : ドアにはどうやら鍵がかかっているようで、開かない。
  : また、もうひとつの扉に鍵はかかっていなかったようで、開けた友人が軽く中を見回したが「なにもなかった」と言って出てきた。
  : 友人がううん、と小さく唸ったあと、あなたに視線を向ける。
東雲 朔:「なんだろうな、入れ違いになったとも思えないし……」
東雲 朔:「タカシ、さっき行った物置部屋とかでドア開けられそうな……なんか探してきてくれないか」バール……だとバールが壊れそう。
東雲 朔:「俺ここで穂村さんと待ってるから」▽
八坂 貴:「あの崩れてたところから転落でもしたかなぁと一瞬思ったけど…… 俺達の物音に気付くくらいならそっちの方にも気付くだろうなぁ」
八坂 貴:「ん、いーよ。穂村さんはお願いしまーす。じゃっ!」戻ります!▽
東雲 朔:「ありがと。……気をつけて」
穂村 月子:「すみません……お願いします」
  : 友人と月子は心配そうにあなたを見送った。ひとり、階下へと降りてゆく。
  : 物置部屋へ向かい、棚に積まれた段ボール箱を探し回り、あなたがようやく金づちを見つけたとき、

  : 大きな物音が二階からきこえた。▽

八坂 貴:「……やめろよなぁ……」ダッシュで戻る▽
  : 足早に来た道を辿っていれば、あなたの耳に今度は先ほどよりも大きな、何か重いものが倒れる音がする。
  : それから足音が響き──そのあとは静寂が訪れた。
  : 一瞬のことだ。
  : 二階についたあなたが見たものは、鍵がかかっていたはずの管理人室の扉が開かれている光景だった。
  : いまは物音ひとつせず、周囲に誰かがいる気配もない。もちろん、そこに二人の姿はないだろう。▽
八坂 貴:「もーー………やだやだ…どうせなら僕がいるうちにしてくれって…」管理人室に入ってみます▽
  : 管理人室に足を踏み入れた途端、あなたは風を感じる。
  : 窓が割れていた。部屋にはベッド、書物机、クローゼットがある。割れた窓から雨や雪が入り込んだらしく、床は泥にまみれてひどく染みができていた。
  : それから。
  : ──床には友人の懐中電灯が落ちている。
  : 手にとって見ても灯りはつかない。電池切れで置いていきでもしたのだろうか?
  : それとも、なにかの衝撃で壊れたのだろうか。
  : *室内全体に〈目星〉が可能。また、窓の外を見ることもできる。▽

 八坂 貴:CCB<=75 目星
 Cthulhu : (1D100<=75) → 27 → 成功


  : 書き物机には引き出しがついていた。それを開けてみると、書類の束の下にカビの浮いた手帳が入っている。(内容は共有メモ参照)
  : それは悍ましい記録だ。事実なのか、発狂した男の妄想なのか──。 SAN-1▽
八坂 貴:八坂 貴のSANが1減少 (SAN:65->64)
八坂 貴:「……精神科は専門じゃないんだよな…… これを患者に言われたら僕はきっと無責任に精神科へ紹介状を書くことだろう、現代医学の闇だ……」
八坂 貴:「部屋にはいないか……どこ行ったんだろな……」廊下に出る▽
  : あなたが廊下に足を一歩踏み出したのと、ほぼ同じ。
  : 窓ガラスの砕ける音で、無意識に振り向いてしまうかもしれない。
  : ──室内で、ぬらぬらと光る太くしなやかな何かがうごめいていた。
  : あなたはそれを、見たことなどない。
  : それは生きた木の枝だった。平たく丸いこぶが先端にぶら下がった木の枝が、あなたの目の前でもがきくねっている。
  : こぶの一つ一つが異様な大きさだ──
  : もう一度音がした。先ほどのものとは別の触手だ。
  : 触手は、ヘビが鎌首を持ち上げるようにして、ゆっくりとうごめいた。
  : 窓を破ってぺしゃんこにつぶれた、何か赤黒い、袋のようなものが飛び込んでくる。
  : その袋には人間の腕がくっついていた。
  : 腕以外には、それが人間であると判別できるものは存在しない。
  : それが触手に締め上げられて、骨が砕け、肉がつぶれた人間の姿だとあなたが気づくのには、1,2秒の時間がかかった。
  : SANc 1/1d4+1▽

 八坂 貴:CCB<=64 SANチェック
 Cthulhu : (1D100<=64) → 47 → 成功


八坂 貴:八坂 貴のSANが1減少 (SAN:64->63)
八坂 貴:「……アンビリーバボーってやつだ。喜べ朔ぴ、ちゃんと幽霊はいたじゃないか」 踵を返して逃げる!▽
  : あなたは咄嗟の判断で、廊下を走る。
  : あの触手の化け物は人間を一人、ぐずぐずになるまで潰していた──!
  : 友人はどうしたのだろうか。
  : ふと、よぎる。ちがう、でも、わからない。
  : それならばあの腕は──まさか。

  : 階下へ行こうとしたあなたの目に、開かれた扉が入る。
  : 化け物がどこまで来ているかはわからない。あなたはその中へと逃げ込むだろう。
  : あなたの日常にとって、いま起こった出来事はあまりにも異常だ。
  : 友人の安否を確かめる必要がある。けれど、携帯は『圏外』をさしているし、二人がどこにいったのかも慣れない山荘では検討がつかない。
  : そのとき、 がさり 室内の隅から、小さな音がした。▽
八坂 貴:「…朔ぴかな?穂村さん?」▽
  : 何者かがものかげから様子をうかがっているのがわかる。
穂村 月子:「ひ、」
  : ──月子だ。▽
八坂 貴:「やっ、穂村さんだ!無事でよかったぁ~怪我とかしてない?へーき?」
八坂 貴:「いなくなってたから心配しちゃったや」▽
  : 彼女の服は血にまみれているが、どうやら怪我はないらしい。
穂村 月子:「え……あ、あ……あの……」
穂村 月子:「わたしは、だいじょうぶです……」
穂村 月子:「その、管理人室で、物音がして……それで、あなたの友人が中へ……」
穂村 月子:「ひとの、うめき声がしたので……でもそのときには、木崎さんは、もう……」
  : 月子は顔を両手で覆っている。泣いているようだ。
穂村 月子:「わたしは怖くて……ひとりで、逃げてしまいました……。あなたの友人を、置いてきてしまって……」
穂村 月子:「ごめんなさい……ごめんなさい、」▽
八坂 貴:「……そっか…木崎さんはお気の毒だったな…」
八坂 貴:「あいつなら平気だよ、そのへんでぴんぴんしてるさ。サインでももらって仲良くなってんじゃないかな」▽
穂村 月子:「……そう、でしょうか……?」
穂村 月子:「あなたも、あの化け物を見たんですか? あんなの、信じられません……」▽
八坂 貴:「まぁまぁ、あんなの信じるのは好きなやつくらいでいいってね。ここから出た頃にはぽかんと忘れてるよ」
八坂 貴:「……一先ずお祖父さんと、ついでにあいつ探しに移動しよっか、立てる?」▽
穂村 月子:「は、はい……だいじょうぶ、です。ありがとうございます」
穂村 月子:「わたしも必死だったのですが、二階にはいないようでした。おそらく一階じゃないかと……」
穂村 月子:「でも階段を降りるのも怖くて……」
  : そこで言葉を切った月子が、室内に大きく開いた穴へ視線を向けた。
穂村 月子:「あの……ここから降りられますかね? この部屋、カーテンがあるので……それをロープ代わりにして」
穂村 月子:「すみません、危ないのは承知なのですが……」▽
八坂 貴:「……なるほど、女性は時として世界で一番勇敢だな」
八坂 貴:「ん、やるだけやってみよう。先に降りるよ。もし落ちても、怖くなっちゃって手を離しても受け止められるからさ」
八坂 貴:「女の子はみ~~~~んな軽いので!ねっ」▽
穂村 月子:「……ありがとう、ございます」すこし微笑んで
穂村 月子:「じゃあ、おさえてますから、気をつけて降りてくださいね」
  : あなたたちは苦労しながらも無事1階に降りることができる。
  : そこは調理室の一角だ。黒くススで汚れた、大きな冷蔵庫がある。
  : 火事のために炭化し、魚の鱗のようにささくれだった柱や、崩れた棚などが懐中電灯の丸い光に浮かび上がった。
  : あなたたちは足音を殺しながら進んでいくだろう。棚を回り込んだところで月子が壁を指差し、
穂村 月子:「あそこを見てください」
  : 壁際に小さな扉があり、それが半開きになっている。
  : 扉の中は地下へ続く階段で、土埃が乱れて足跡が残されていた。中にだれかが入ったことは明らかだ。▽
八坂 貴:「なーるほど、地下ね……いわゆるひとつの防空壕だなぁ」
八坂 貴:「足跡なら少なくとも木ではないね、見てみよっか」▽
穂村 月子:「は、はい! 二人はここにいるかもしれませんね」
  : 月子が明るい声を出す。
  : あなたの言う通り、足跡があるのだから少なくとも下に行ったのは化け物ではないだろう。あなたたちは階段を降りてゆく。
  : それは長く、しかも急な階段だ。火が回ったらしく、階段の一部は焦げてもろくなっている。
  : 懐中電灯で足下を照らしながら、黒くなった部分を避け、あなたはそろそろと下りていくだろう。
  : 階段を下り切ると、開けっ放しになっている小さな扉があった。扉をあけてのぞきこむと、中は真っ暗だ。▽
八坂 貴:「……朔ぴ~~~~~~~~いないか~~~~~い」▽
  : では、声を投げれば、ゆっくりと出てくる人物がひとり。
東雲 朔:「ふたりだとは思わなかった……びっくりした」
  : 友人の姿が見えた。聞き慣れた声、彼はどこも怪我をしておらず、無事のようだ▽
八坂 貴:「おっ生きてた!生きてるってすばらしーーーな!オッスオッス、げんき?」▽
東雲 朔:「元気……まあうん、げんき。なんともないし。タカシは? 穂村さんもだいじょうぶですか?」▽
八坂 貴:「僕はとってもげんきいっぱい」▽
穂村 月子:「わたしも、はい……だいじょうぶです」
東雲 朔:「そっか。それはよかった」
東雲 朔:あの怪物から逃げようとして、それでここに来て……穂村さんのおじいさんを見かけたんです」
東雲 朔:「この奥に扉があって、そこに入っていったから……たぶん中に」▽
八坂 貴:「えっお手柄じゃん。朔ぴにMVPあげよ」▽
東雲 朔:「ん。どうも」
穂村 月子:「おじいちゃん? この中にいるんですか?」
東雲 朔:「ええ、小柄で懐中電灯を持ってましたからそうだと思います」
  : 扉には鍵がかかっているようだ。あなたの持つ金槌を使い、てこの原理で開けられそうではある。 <判定:機械修理>▽

 八坂 貴:CCB<=20 機械修理
 Cthulhu : (1D100<=20) → 31 → 失敗

 東雲 朔:CCB<=20 機械修理
 Cthulhu : (1D100<=20) → 5 → 決定的成功


八坂 貴:「………なるほど、君は天才だ。神といっても差し支えはなかろう」▽
東雲 朔:「バレたからにはしょうがない……」ううん、と首を横に振り「帰ったらなにか奢ってくれ。神だから」▽
八坂 貴:「え?天におわす神の方が我々愚かな人類より目上なのでは……?目下の人間ごときに奢らせて恥ずかしくないのか……!?け、けち!!」▽
東雲 朔:「なんでだよ。庶民派の神なんだよ。親しみやすいだろ」金づちを返す。「よし、開けるか」▽
八坂 貴:「庶民派の神ってなんだ庶民派の神って!!じゃあ僕は神派の庶民ーーーーー!」開ける!▽
  : 中に入れば隅のほうに小柄な男性がうずくまっていた。駆け寄った月子の反応からして、それが祖父である芳山であることがわかるだろう。
穂村 月子:「おじいちゃん、わたしよ。無事でよかった。帰りましょう?」
  : さらに、耳をそばだてることなくあなたの耳にこんな声がきこえる。
芳山 幸吉:「呼ばれた……だから来た……怪物に呼ばれた……でも、おまえはもういらないって……」▽
八坂 貴:「……一先ずはご無事で何よりだ……けども…」▽
東雲 朔:袖を引きながら小声で「……なんだか、様子がおかしくないか? 早く連れ帰ってやったほうがいいよな」▽
八坂 貴:「怖い思いをしたショックでこうなることもあるのかな………怪物に関してはあながち妄言とも言い切れないけども……」
八坂 貴:「……うん、早く連れ帰るのには賛成だ。なんたって専門じゃないからわかんない……というか、心配こそすれ僕じゃどうしても適切に処置ができないかんね」▽
  : 友人が頷き、その旨を月子に話せば彼女も賛同する。

  : では、あなたたち四人は地上へと出て、この山荘から出ようとするだろう。
  : 原因不明の電波障害で、スマートフォンの電波は通じない。したがって、助けを求めることはできない。
  : また、食べ物や飲水があるわけでもないから、ここで何日も籠城するというのは現実的ではない。
  : 月子の車は山荘の近くには停めていないようで、鍵は木崎が持っていたらしい。あなたたちの車は山荘近くにとめてある。
東雲 朔:「ただ、ここに怪物がやってきたら終わりだと思う。急いで外に出ましょう」
東雲 朔:「俺が囮になるから、みんなはそのすきに車まで走ってください」▽
八坂 貴:「……それ、勝算あって言ってる?」▽
東雲 朔:「どうだろうな。脳直の考えみたいなもんだ。……ただ、いろいろ考えてる時間もないだろ」
東雲 朔:「俺が引きつけるから、その間に車にみんな乗せて山荘の入り口くらいまできてほしいんだ」
東雲 朔:「そしたら俺も乗るから……いや、でも俺がひとりで車取りに行ったほうがひきつけられるのかな……」▽
八坂 貴:「……いいよ。ならお前ひとり動かせるより同時進行した方が早いだろ。」
八坂 貴:「僕は車、二人の安全を確保してお前を拾う。…ひきつけるっても、アレ相手だと限度あるでしょ。 それでいい?」▽
東雲 朔:「…………んーーーー……」
東雲 朔:「わかった」折れた。「そうするよ。……悪かったな」
東雲 朔:「じゃあ」小指を出す「ちゃんと戻ってこれるように約束」▽
八坂 貴:「ん、僕は全員が安全に帰る確率が高くなるならなんでも。…オーケー、グッドラック」約束!▽

  : では、あなたは一度友人と分かれ、車を取りに行く。
  : 森は暗く、月は赤い。あなたたちは懐中電灯を消し、極力音を立てないように移動した。風が吹き、葉ずれの音がする。
  : それはあなたたちの身をすくませた。何か大きな黒いものが森のなかを這いずっているような想像をさせるからだ。

  : しばらく進むと、その想像は現実のものとなった。
  : 確かに何かがうごめく気配がある。ゆっくりと、それは夜の森の中を動いていた。
芳山 幸吉:「呼んでいる……怪物が呼んでいる……」
  : 芳山はつぶやき続けている。あなたはそれでも、彼らとひとかたまりになって移動していくだろうか?▽
八坂 貴:「…穂村さん、お祖父様と離れないようにして。俺も離れないようにするけど、僕よりお孫さんの方が安心でしょ」医者は見捨てない~~~!一緒にいます▽
  : ではそのように。あなたたちは共に移動していくだろう。

  : 車までたどり着き、二人を後部座席に乗せてから、あなたは友人を拾いに山荘のところまで運転する必要がある。
  : ライトをつけ、山荘の入り口まで突っ切ることもできるし、警戒してライトをつけずゆっくり向かうこともできるだろう▽
八坂 貴:「男は度胸!!!!!掴まっててね穂村さん!!!」男なのでアクセル踏みこんだ 後悔はない▽
  : 月子が答える前に、あなたはスピードをあげて車を飛ばす。

  : 山荘の近くまで無事にたどり着くと、あなたの友人が足早に駆けてくる。
  : 大きく森の木々が揺れたのはその時だった。
  : 近い。
  : ぎしぎしと音を立てて木が倒れていく。
  : 赤や黄色に色づき始めた葉が月の光の中、舞い散った。
  : 友人が助手席へ滑り込むのと同時に、それは姿を現す。
  : 怪物は巨木のような姿をしていた。触手がうねうねと動き、あなたたちを捉えようとしている──! SANc 0/1d6▽

 八坂 貴:CCB<=63 SANチェック
 Cthulhu : (1D100<=63) → 88 → 失敗

 八坂 貴:1d6
 Cthulhu : (1D6) → 4


八坂 貴:八坂 貴のSANが4減少 (SAN:63->59)
  : 車はいま、山荘の入り口に鼻先を向けている。ターンして急発進する必要があるだろう。
  : けれどこのままうまく行くかどうかは、また別の話。 <判定:運転>▽

 八坂 貴:CCB<=65 運転
 Cthulhu : (1D100<=65) → 77 → 失敗


  : 怪物の触手がフロントガラスをたたき割った。
  : 同時にタイヤがバーストする音が響き、車体が傾いた。もはや走って逃げるしかない──!

  : 希望は絶たれた。
  : 背後に触手が迫る。怪物の動作は決して速くはないが、追いつかれるのは時間の問題だろう。
  : こちらは息も絶え絶え、向こうは疲れなど知らない。
  : あなたたちの頭上を黒い影が走る。あわてて身をかがめると、それは鈍い音を立てて地面に落下した。
  : ……自動車のドアだ。
  : 怪物が腹立ちまぎれに引きちぎり、放り投げたものだ。
  : 「もう助からない」と月子がつぶやくのが聞こえた。
芳山 幸吉:「扉……扉……」
  : 芳山はそううわ言のように言って、地面に膝をつく。
  : 彼の目の前には運転席のドアが落ちている。
芳山 幸吉:「あけて……行かないと……」
  : あなたたちの背後で、メリメリと音がする。
  : 怪物はわれを忘れたようにして暴れまわり、地面から木を引き抜き、振り回していた。
  : その時──
  : 芳山がゆっくりと腕を上げ、指を伸ばした。その指は真上を指していた。
芳山 幸吉:「り……り……りいぎくす」
  : リーギクス。聞いたこともない言葉だ。
芳山 幸吉:「とびらのかぎ……ひろった。りいぎくすにかえりたい……ざーだほーぐらのみもと……」
  : 芳山はポケットから何かを取り出し、猿のような素早さで地面に落ちた自動車のドアにとりつく。
  : あなたは彼の持っているものを奪うことができる。もしくは、それをする気力もなく、すべてを諦めるだろうか?▽
八坂 貴:「……ちょっと」拝借します!▽
  : それは鍵だ。自動車メーカーのロゴが書かれている──
  : 車の鍵だ!
  : 殺された木崎が持っていたものだろうか?
  : あなたの手の中のものを見て、友人が叫ぶ。
東雲 朔:「走ろう!」▽
八坂 貴:「ん」ついてく!▽
  : 月子は芳山の手を引き、あなたたちは再度走り出す。
  : 森の中の狭い道を駆け、道路に出た。月子が「あそこ!」と指差し、その方向には車がある。
  : あなたは運転席に駆け込み、エンジンをかけるだろう。
  : 全員が乗るのを確認するのと同時に、あなたは思い切りアクセルを踏んだ。車はとんでもなく乱暴な発進をする……!


  : それからしばらくのち。
  : あなたが運転する車は山道を走っていた。化け物は完全に撒いたようだった。
  : 一言も話さないまま車を走らせる。あまりにも疲れて、口をきく元気がなかったのだ。ほかのみんなも同様のようだった。
  : その時、電子音が鳴る。友人がスマートフォンを手に、
東雲 朔:「いままで電波悪かったのがウソみたいだな。……警察を呼ぼうか」
穂村 月子:「木崎さんが亡くなったのをどう説明すればよいかわかりません」
穂村 月子:「とうてい信じてもらえないでしょうし……少し時間が欲しいです」
  : と、月子が沈んだ声で言った。
  : 無理もない。あんなことが起きたのだ。

  : ヘッドライトが暗闇を切り裂く。
  : 最初のうちはライトにひときわ大きな木が浮かび上がるとあの触手の化け物ではないかと警戒していたが、あなたたちはやがて自分たちが必要以上におびえていることを知るだろう。
  : ハンドルを握る手はこわばっていた。
  : やがてぽつり、ぽつりと町の明かりが見えてくるようになる。
穂村 月子:「……あれは、いったいなんだったんでしょうか」
穂村 月子:「いったい……」▽
八坂 貴:「……でもま、とりあえず怪我もなく生きててよかったねぇ」▽
穂村 月子:「そうですね……そう、ですよね……」
東雲 朔:「…………」
  : 車内はとても、静かだ。
  : 月子も、あなたの隣に座る友人の表情もよく見えない。
  : そろそろ明け方が近いとはいえ、あたりは暗い。
穂村 月子:「おじいちゃんは……だいじょうぶなんですよね?」
  : 手帳には、寄生や宿主という言葉があり、それから推測するに化け物は人にとりつく能力を持っているようだった。
  : では、その怪物は今も誰かにとりついているのか。
  : さて、あなたは月子になんと答えるだろうか。

  :「今も芳山は寄生されている」
  :「今は月子が寄生されている」
  :「自分が寄生されている」
  :「実は友人が寄生されている」▽

八坂 貴:「あ~~……人に憑りつくらしいもんねぇ、化物さん」
八坂 貴:「……お祖父様は大丈夫だよ。「おまえはもういらない」と他でもない怪物が言ったんでしょ」
八坂 貴:「僕でもないなぁ、なんたって神ってるとはいえ庶民なんでね………へへ、自分で言って照れちゃった…」
八坂 貴:「でも僕はお前はちょっとわかんないや、朔ぴ」▽
東雲 朔:「……俺が? なんでだよ」▽
八坂 貴:「…芳山さんはもう要らなかったんでしょ。僕言ったよ朔ぴ、無は有からしか生まれないんだ」
八坂 貴:「なら、「もう」要らなかった芳山さんは、少なくとも過去には必要とされていたわけだ。ここに来た一週間前にはおそらく」
八坂 貴:「お前がここに来たのは先週さ、…なら芳山さんを捨ててお前に憑いた可能性は否定できない。可能性の話だけど」
八坂 貴:「………で、ここからはまた別の話でね」
八坂 貴:「よく懐中電灯もなしに、あのオンボロ屋敷の2階から1階まで怪我もなく行けたわけだ、と僕は感心した」
八坂 貴:「少なくとも僕は難しいと思ったんだよね。庶民なので」
八坂 貴:「……芳山さんは既に用済み、穂村さんは疑う理由が見当たらない、僕は僕を主観だけで判断できない」
八坂 貴:「なら、真偽はどうあれ「僕」の考えとしてはお前だ、朔。 神派庶民の妄言としては100点満点中何点くらいだろう?」
八坂 貴:「庶民派神たる君の考えを拝聴したいなぁ」▽
東雲 朔:「……なんだそれ」
東雲 朔:「いや、ううん」「おまえは本当に頭がよく回るよな、貴」「尊敬する」
東雲 朔:「おまえは自分を客観視できないけど、俺に関しては主観以外におまえが客観視できるわけだ。……おまえらしいな、」

  : あなたは思い出す。
  : 記憶を裏返してみる。

  : 彼はこの山荘を『一週間前に見つけた』と言っていた。あとで心霊スポットだとわかったのだと。
  : 本当にそうだろうか? もっと前から知っていたのではないか? 彼の発言や行動におかしな点はないのだろうか……?
  : たとえそうでも、彼が訪れた一週間前、それから芳山が以前来たという一週間前。
  : そのときに宿主を変えていた可能性だって、あなたの指摘通り考えられないことではない。
  : ……最初から、彼は本当に自分の知る“東雲 朔”だっただろうか。

  : それに、怪物と遭遇後、地下へ行ったときのこと。
  : 初めて訪れた廃屋。しかも、火が階段にまで回り、焦げてもろくなっていた、崩れた柱で足もとは危うい。そしてあたりは完全な暗闇。
  : あなたはきっと、確信する。
  : 彼の懐中電灯はこわれていたのに、慣れない闇を怪我もせず行くなんて。
  : ──“なに”であれば。
  : 彼が何であれば、それができるのだろうか。

  : 穏やかに、彼は笑い出す。
  : その笑い声が、耳障りな哄笑に変わった。
  : どうしたと尋ねる間もなく、友人の身体がけいれんをはじめた。
  : 彼の口から なにかがのぞく。
  : ──それは生物の眼だった。
  : なにかが出てこようとしている。
  : そうだ。それは決して、あなたの友人ではない。
  : ざわざわとうごめく触肢。鳩ほどのおおきさの、うろこに覆われた身体。
  : はっきりと憎しみを込めた眼を持った生物は、少なくとも形は昆虫に似ている。
  : だが、断じて地球上の生物などではない──! SANc 1/1d6▽

 八坂 貴:CCB<=59 SANチェック
 Cthulhu : (1D100<=59) → 96 → 致命的失敗

 八坂 貴:1d6
 Cthulhu : (1D6) → 4


穂村 月子:「いやあああああ!!」
  : 月子の悲鳴。
芳山 幸吉:「かみさま、ああ、かみさま、かみさま。わたしを導いてください」
  : 老人が祈る。
  : あなたはこの一瞬間、『なにかをしようと』試みることができる。怒声を浴びせても、嘆いても構わない。▽
八坂 貴:「……朔」

八坂 貴:「喜べよ、神が庶民に奢るサイコーに絶好の機会だぞ」▽

  : あなたの声は届いたのだろうか。
  : わからない。
  : 急ブレーキを踏み、ハンドルを切る。
  : 怪物はあなたへ触肢をのばそうとして──
  : けれどその衝撃により、後部座席に積まれたままのクーラーボックスが飛び、あなたの首筋近くに迫っていた怪物を巻き込んでフロントガラスを突き破った。
  : 怪物は外へ投げ出される。そして轢殺されんとするその瞬間──怪物は革のような翅をはためかせ、ふわりと跳んで自動車から逃れた。
  : そのとき、あなたは見た。
  : 昆虫族の燃えさかる憎悪の眼と、ぱくぱくと動くいやらしく濡れた口を。
  : それははっきりと、あなたに向けられていた。
  : 『もう少しだったのに』
  : そんな言葉すら、きこえてくるようだ。


  : ………………


  : 随分してから、友人の小さなうめき声があなたの耳に入ってくる。▽
八坂 貴:「やあーっ、おはよ!げんきげんき?」▽
東雲 朔:「……………」
東雲 朔:「……元気なわけあるか。身体中痛い」▽
八坂 貴:「それはお気の毒に!あやうく心霊スポットを回ってお前にサインをもらわないといけないところだったにゃあ」▽
東雲 朔:「? 死にかけたの俺……? 知らない車だし、おまえのどうしたんだ……?」
東雲 朔:「…………もしかしてなんか迷惑かけた?」▽
八坂 貴:「忘れてしまったのか………?まさか………そんな!!!Why!?親友なのに!!!??」
八坂 貴:「思い出せ!!!!お前が僕に寿司奢るって約束!!!!!!!!!」▽
東雲 朔:「すし……そうなの? あ、そう……おぼえてないけど……」
東雲 朔:「まあおまえが言うならそうか。奢るよ、うん」よくわかんないけど「……うわー、朝だ」
東雲 朔:「でもまだちょっとだけ星見えるな。きれいだ」▽
八坂 貴:「にゃっ!!!!ホントに!??嘘だけど言質はとったからまぁ僕の大勝利ですね!!!コングラッチュレーション八坂!!」
八坂 貴:「い~~~じゃんわかってんじゃん!この時間帯の星、本当~~~~~に好きなのね、僕」▽
東雲 朔:「嘘かよぉ……いいよもう、なんかしちゃったのは本当っぽいし……おまえが言わなくても、それはわかる」
東雲 朔:「その分はまあ、俺ができることなら返すから……悪かったな」
東雲 朔:「……星見られたアレで、少しは勘弁してね」▽
八坂 貴:「ん、いーよ!僕は神派の庶民なので勘弁してあげるとしよう。庶民派の神はそこでゆっくり安眠していたまえ」▽
東雲 朔:「なんだそれ」「お言葉に甘えて寝とく。ありがとな、……おやすみ」▽
八坂 貴:「はーい!グッナイ」▽


  : 隣で眠る顔は、あなたの知る友人そのものだ。
  : まあきっと、その疲れにおぼえはないのだろうけれど。
  : 車のスピードをゆるやかに落としていきながら、町の中へと入っていく。
  : 悪意の塊だったあの化け物は、きっとあなたの脳裏にこびりつくのだろう。
  : またどこかで、別の宿主を見つけるのだろう。
  : けれど、隣の存在は変わらず、あたたかい。
  : 明け方の薄もやに包まれて、ぽつり、ぽつりと、明かりが見える。
  : 町はもうすぐそこだった。
  : あなたたちが帰るべき町は、もうすぐそこに。


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  :   亡霊の樹   presented by Kandai Matumoto

  :   八坂 貴 (PL:みそ)
  :   KP:まつき

  :   ...True End.